長井市には、大人心をくすぐる、それはそれは素敵な場所がある。
けれど「その場所」は、そうやすやすと楽しめるわけではない。
気ままにふらりと立ち寄ろう、なんて思っていると大体肩を落として踵を返す羽目になる。
なぜならそこは、1年365日のうちたったの84日しか開いていない、ちょっとした “ 幻 ” とも言える場所なのだから。
やませ蔵美術館
やませ蔵美術館は元々、「山清(やませい)」という屋号の長井の一豪商が代々住んできた屋敷の一部を“蔵の美術館”にしたもの。
蔵を一つ一つ回って、企画展や歴史資料などを見て回る。
入口から奥に進むと、外からは伺い知れなかった庭が待ち受けている。予期せずぽっかりと開けた空間に、自然と視線が上向く。
敷地の真ん中には、丹精込めて手入れのされた浮世を忘れさせる庭が有り、それを取り囲むように蔵が点在している。
今回訪れた時は一番最初の蔵(東蔵)に長井出身の画家、舟山一男氏の作品が展示されていた。
絵を見て、庭を見る、庭を見たら、また次の絵へと歩を進める。
合間に水琴窟の涼やかな音色を聞きながら。
時間は常にゆぅるりと、せっかちにいざなうでもなく、ぐずぐずと引き止めるでもなく、やわらかく流れている。
長井の「井」は“水の集まるところ”の意。
水の集まる所に人が集まり、商売が生まれ、蔵が建ち、時を経て蔵は美術館となって生まれ変わり、そこをまた人々が訪れる。
―移ろいの中にある ささやかな普遍―
そんな想いを水が運んできてくれた。
手入れのよく行き届いた庭には、四季折々の花々が競うでもなく、かといって「はかなげに」とも違って、ただ、置かれた場所に凛と咲いていた。
蔵と、絵と、庭の花や木々、
水と風と水琴窟の響き、
もしかしたら、それに交じる自分の足音、
そのすべてがこの美術館を成すものなのかもしれない。
疲れすぎずに見れる規模も、大人の美術館の一要素。
蔵の展示物を堪能し終わったら、庭を見渡せる場所でコーヒーのおもてなしをいただいた。 贅沢なひと時。
美術館のことをブログ記事で紹介してもよろしいでしょうか、とお伺いすると、とても品の良い女性が
「どうぞ、お好きなように、 感じられたままを お書きください」と穏やかに言ってくださった。
蔵も美術品も庭の木々や花たちも、確かに昔からあったものを上手く生かしてこそかもしれない。
けれど、この美術館全体をとりまくやわらかで凪いだ空気の流れは、この美術館を支える人々の、心と指先から湧き出ているのに他ならない。
petit aya
やませ蔵美術館
山形県長井市あら町6-61 TEL 0238-88-9988
【開館期間(H29年度)】4/14〜11/19 夏季休館7/31〜8/31
【開館日】 毎週 金・土・日 10:00~17:00(入館は16:30迄)
【入館料】
一般 500円
高・大学生 300円
小・中学生 100円
【Facebook】
https://www.facebook.com/yamaseguramuseum/
やませ蔵美術館、御当主竹田氏のインタビュー記事は→こちら(長井ポータルサイト内)
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